契約シンデレラ

「僕は晶と一緒に暮らしている。今更咲奈との結婚は考えられない」
「でも、結婚したわけではないでしょ？」
「それはそうだが・・・」

咲奈さんがなぜこんなにも頑なに圭史さんとの結婚を望むのか、私は理解できない。
ただ、咲奈さんが圭史さんを好きなのだというのは伝わってきた。
それはおそらく打算的な感情ではなく、純粋に圭史さんのことを好きなのだと感じられた。

「晶さん、あなたは圭史のことをどう思っているんだね？」

しばらく圭史さんと咲奈さんとのやり取りが続いた後、お父さんに尋ねられた。

「私は圭史さんのことを素敵な方だと思っています」

これは嘘ではない。
愛していますとか、結婚を望みますとは言えないけれど、決して嫌いではない。

「これからも一緒にいたいと思っているのかね？」
「ええ」

これは契約上のイエス。
今の私にはそう答えるしかなかった。