おれには中1のときから付き合っている彼女がいる。
 今日は10年目の記念日だ。
 だけど、このままダラダラ付き合って行くのも悪くはないが、俺も彼女も23歳。ケジメをつけることにする。
 今日のデートで、彼女の好きな阪神が勝ったらプロポーズ。負けたら別れよう。
 今日は阪神対巨人。14時から試合が始まるから、彼女との待ち合わせ時間である18時までには終わるだろう。
 運命に賭ける。もしおれの運命の人が彼女ならば、別れてもまたどこか別の場所で再び出会えるはずだ。

 17時30分。仕事を切り上げて待ち合わせ場所へと向かう。
 いつもなら頻繁に確認する試合速報も、今日は待ち合わせ場所につくまでは見ないと決めた。

 運命を信じる。そう思いながら、阪神対巨人の試合結果を見る。
 …あ。運命なんてこんなものだ。
 2対5。結果は巨人の勝ち。
 それを確認したら、すぐに彼女がやってきた。
 彼女の笑顔が胸にささる。
「おまたせ、塁(るい)! 待った?」
「いや、今来たとこ」
「じゃあ行こっか」
「うん」
 今日のこのデートが終わったら、彼女に言おう。そう、終わったら。

「あのさ、塁。」
 レストランで食事をしていると、彼女が真剣な眼差しでおれを見てきた。
「なに?」
「私と結婚してください!」
「え?」
「あのね、実は賭けをしてて。今日の阪神対巨人の試合で、塁の好きな巨人が勝ったらプロポーズしようって決めてたの。」
 口元に笑みがこぼれる。なんだ。おれたち、2人揃って同じ違う賭けをしてたのか。どちらに転がっても、結婚する運命だったってことか。
「塁。結婚してください」
 運命なんてこんなものだ。
「はい」