ガレージにはパパ・ママと、お兄ちゃんそれぞれの車がある。
 私は車はよくわからないんだけど、聖お兄ちゃんの車は白いスポーツカー?
 暗黒お兄ちゃんの車は、黒くて四角くて大きい車。
 前に学校へ送ってもらったら、男の子達が『すげー!』って大興奮してた。

「昨日はレイトショー行って? 夕飯どっかで食ったの?」

 レイトショーって夜の映画のこと。
 私も初めてでドキドキしちゃった。

「ううん。私が聖お兄ちゃんのハンバーグ食べたいって言ったからお家で食べたよ」

「まじかー聖のハンバーグ食いたかったな」

「暗黒の分は冷凍してあるよ。言ってくれたらいつでも焼くから」

「サンキュー!」

「ふふ」

 この二人、正反対だけど本当に仲良しなの。
 それぞれにお友達はいるけど、ほとんどいつも一緒。
 だから昨日の暗黒お兄ちゃんは、電話を無視したんじゃなくって、本当に地獄でのお仕事が忙しかったんだと思う。

「聖~映画の予約頼むな」

「もうしてあるよ」

 聖お兄ちゃんは後ろの席で、私は助手席。
 暗黒お兄ちゃんの運転する姿は、すっごくカッコいいの。
 パパは運転がちょっと苦手だったからね……。
 二人は運転が好きなんだって。

「来月にでも温泉旅行に行くか」

「いいね。ルウは行きたい温泉あるかい?」

「温泉……ちょっとわからないけど、プールがあるとこがいい!」

「最高じゃん。晩飯食いながらガイドブックでも見よう」

 お兄ちゃん二人は大学生だけど、お仕事もしてるからお給料ももちろん貰ってる。
 車も自分で買ってるし、映画とかのお金も全部出してくれるし……。
 スパダリ過ぎるのです。

 町で一番大きい映画館に着いた。
 モールの中にある。

「帰りに買い物もして帰るか」

「私、本屋さんに行きたいな~」

「いいね」

 映画館では、みんなが二人を振り返る。
 芸能人スカウトは、二人が芸能界には入らないって情報が、もう知れ渡ってるから近寄って来ないんだけどね。

「暗黒君!」

「えっと……どちらさん?」

 ポップコーンを選んでいたら、綺麗な女の人に声をかけられた。

「パル芸能事務所の佐藤よ。お久しぶりだから、忘れてしまうわよね」

「あー? うん、わかんない」

「失礼ですが、どういったご要件で?」

 えっ芸能人スカウト? 
 近寄ってこないって思ってたのは私の勘違いだった?

「貴方達が大事そうに守っている、真ん中の女の子に用があったのよ!」

 え? 私?

「私ですか……?」

「そう! こんなにも輝いた可愛い子は久しぶりに見たわ! 原石というか、もう磨かれているわね! まさに天然ダイヤだわ! 是非うちの事務所へ!!」

「えっ!?」

 わ、私~~!?