上山、涼実。


あの水かけてきたあの子?


今度は何されると思うととてつもなく向かいたくない。


「ごめん、今ちょっと手が離せない仕事してて……。」


座って考え事してるだけだけど、ノートでも広げてればいいよね。


「いいからいいから。」


なんとあの上山さんは他クラスにもかかわらず、私の教室に入って私を無理やり連れ出したのだ。


「ちょ、何するんですか、やめてください!」


聞くような素振りも見せずに、上山さんは一目散に走っていく。


一体どこに行くの?


そして、引っ張られるままに到着した場所は、体育館脇の薄暗い場所だった。


漫画でよく見るヤツだ……。


恐ろしい、現実でもこんなことあるんだ……ってのんきにいる場合じゃない。


「この間言ったよね、井田君に近づかないでって。あんた聞いてなかったわけ?」


聞いてたけど、従う必要性なんて感じなかったし、そもそもこの人の話をまともに聞いてちゃダメだ。


「私は別に、あなたに従う筋合いなどありませんから。」


私にしては珍しくそう強気に答えた。


でも上山さんはギリギリと悔しそうに私を睨んで、続けて言った。


「本当にあんた目障り。井田君の周りをうろつかないでよね!」


怒った彼女はそう吐き捨てると右手の拳を私に向けてきた。


殴られちゃう、よね。このままだと確実にその拳に当たっちゃう。