体育祭が終わって―――井田君が私に冷たくなって―――から、早くも半月。


次の期末テストに向けてみんな焦っているらしい。


そんなことより、私はどうにも井田君が気になって仕方がなかった。


「桜井。」


昼休み、することもなく教室の自分の椅子に座っていると、不意に井田君から声をかけられた。


「な、何?」


嬉しくって飛び上がりたいところだけど、ここは抑えて冷静に聞き返した。


「体育委員のときこの縄返さなきゃだから、覚えといて。」


私もうそれ知ってるし、ちゃんと覚えてるのにな。


内容こそどうでもいいものの、話しかけて貰えたのはちょっと嬉しかった。


でも、やっぱり前よりも暗くて冷たい感じがする。


悲しいって思っちゃうのは、井田君のことが好きだから、かな?


私は今まで恋なんかしたことなくて、その気持ちにいつ気づくのかすらわからない。


でも、普通に人に冷たくされるなんて、相手が誰でも傷つくよね?


うん、私は別に井田君のことが好きとかではない……。


だからといって冷たくされるのは嫌だけどなぁ……。


「もう、どっちなのよ……。」


自分でもわからなくて声にまで出ちゃってる。


こういう時相談できる友達がいないから余計に私の心をジリジリと責め立てる。


「あ、桜井ちゃん、上山涼実って子が呼んでる。」