もちろんクラスでは井田君はヒーローと賞賛され、打ち上げまで行うことになった。


先生がカラオケのパーティールームを取ってくれて、私服になったクラスメイトがわやわやと集まった。


「桜井、転んだ傷は大丈夫か?」


「あ、うん。ありがとね、色々と。」


井田君、本当にヒーローみたいな人。


「そうか。でも、俺と話すのは今後控えよう。」


「え、なんで?」


私が聞き返しても、もう1度何かを言ってくれる気配がなく、仕方なく引き下がった。


話すの控えるって、なんで?


井田君、さっきまで心配してくれてたのに、急に私のこと嫌いになったのかな?


「あの、井田くっ……。」


「はーい、じゃあ次は本日の大ヒーロー井田が歌いまーす!」


もう1回話しかけようとしたけど、クラスメイトの声でかき消された。


一体、井田君は何を考えているんだろう。