有名なチョコの店なのだが、余り、人が少ない時間に来ているから、選びたい放題だ。
「わあ!」
「好きなやつ頼め」と俺が言うと日菜は大喜びだ。
「ありがとうございます!どれにしようかな」
目の奥の光が眩しいほど光って、ショーケースを見つめている。
「朔夜君、そこに居るのは、彼女さんかい?」
と店の奥から出てきたのは、店長だった。
「お久しぶりです。こっちが、彼女の日菜です。バレンタインの時はお世話になりました」
実はバレンタインで日菜にサプライズするのに、アルバイトを短期だけど、この店でやらせてもらっていた。
「いいんだよ。朔夜君はうちの店の常連さんなのに、おまけとか、全部、断って」
「他の人達がちゃんとお金払ってるのに、俺だけ、タダで何かもらったりする訳には、いきませんから」
「まあ、たまには、お礼させて欲しかったんだよ」
「また、機会があれば、お願いします」
「もちろんだよ。彼女さんとも、おいで」
と店長は笑った。
「はい。ありがとうございます」
「朔夜先輩、チョコ、決まりました!」
「注文は?」
「まだです」
「先に、飲み物と注文して、席に座って、待ってろ」
俺は窓際の席に指をさす。
「分かりました!」と言って、日菜は、満面の笑みで、他の従業員に注文を始める。
「すみません。アイツ、いつも、こんな感じで」
「いいんだよ。朔夜君の大切な人だって、伝わってくる」
「朔夜君」
今度は、よく、一緒にシフトに入っていた先輩が店の奥から出てきた。
「どうも」
「今ね、ホワイトデー限定のマカロンをやっててね。
ホワイトデー当日もマカロンがメインのお茶会を誰かと出来るようにするんだけど、朔夜君、彼女さんとどうかな?」
お茶会...。マカロン。
「マカロンはね、特別な人に渡すのよ」
特別な人...日菜。
「よかったら、二階の窓際の席、用意するよ」
二階席って、特別な時にしか開けないところだ。
「良いんですか?」
「常連の頼みとあらば、任せなさい」
と得意げに店長は笑った。
「それなら、お願いします」
日菜へのもう一つのプレゼント。