最近、悩む事は、彼女へのプレゼントだ。
二年前から付き合っている後輩の日菜。
この前もバレンタインの日に出かけた。
よく、日菜は一緒に出かける事をデートと呼ぶが、自分にはしっくり来ない。
だから、誘うときも、出かけるかと誘う。
楽しかったし、日菜の笑った時が何より、嬉しい。
だから、悩むのだろうな。
今、悩んでるプレゼントは、ホワイトデーのプレゼントだ。
誕生日やクリスマスは悩まないのだが、ホワイトデーは悩んでしまう。
日菜に聞くにしても、勘繰られるのは避けたい。
だから、聞くのは我慢だ。
ホワイトデーはアクセサリーとかの雑貨に加えて、
チョコを送る事も頭によぎるから、普段に比べて、余計に悩む。
...チョコか。
探すのもあまり、合わないしな。
とりあえず、作ってみよう。
「朔夜先輩?」と声をかけられて、我に返った。
俺に声をかけたのは、彼女の日菜だった。
「おはよう、日菜」
「おはようございます」と俺を見つめてくる日菜。
「日菜、どうした?」
今は、学校の登校途中で、この時間なら、日菜はまだ、電車に乗ってるはずと思ったのに、スマホを見るともう、いつもなら、学校に着いているはずの時間だった。
「見つけてから、ずっと、話しかけても、上の空で、歩いて行っちゃうので、追いつくの、大変だったんですよ。朔夜先輩は、大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。心配させて悪かったな。考え事してたんだ」
「私で良ければ、話、聞きますよ?」
本人に日菜の事なんて、言えるわけねえよ。
「また、伝えるから、その時、聞いてくれ」
すると、日菜は怪しんだのか、少しの間、黙り込み、
「はい。分かりました」
と納得のいかない返事が返ってきた。
どうする、俺。考えろ...。
そして、口から出たのは、
「それより、一緒に行くか?」
残りの時間が少ない朝の登校に誘う言葉だった。
でも、日菜は嬉しかったのか、
「行きます!」と速攻で返事が返ってきた。
俺も日菜に会えたし、嬉しいけどな。
「先輩、嬉しい事、あったんですか?」
「日菜に会えたから、ラッキーだなと思ってさ」
俺が素直に言うと日菜は顔が真っ赤になった。
「私も朔夜先輩に朝から会えて嬉しいです」
俺は返事の代わりに日菜の手を握った。
日菜もそっと、握り返して、俺の静かな言葉に答えてくれる。
とにかく、チョコの事、怪しまれなくてよかった。
日菜に喜んでくれるように、頑張ろう。