ビターなフェロモン (短)


傘の下から抜けて、私から一歩離れたところにいる蓮人くんの手を握る。


手と手が直接触れている。
イコール、あの条件は満たしている。

これからフェロモンが出て、きっと私たちは――


「バカ桃子、なんで触ったりするんだよ!」

「ば、バカなんて、言わないで……っ」


ぎゅっ、と蓮人くんの手を握る。

すると自分の中の血液が、じわじわと温度を上げていくのが分かった。


「この手を追いかけたいって、そう思っちゃったの……っ。勝手に握って、ご、ごめんなさいっ」

「桃子……」


雨ではない、自分の涙がポロリと頬を流れる。

その涙は冷たいんだけど、温かくて……。


「あ、そうか……」


さっき皐月くんを追いかけなかった私が、蓮人くんの手すらを追いかけてしまうのは……

今の私の気持ちか、きっと、


ココにあるからなんだ――


「あの、私……っ」

「桃子、制服が濡れてるぞ。しかも……はぁ〜。そんな恰好で帰らせられるか」