ビターなフェロモン (短)


「ど、どうして……電話に気付いたの?」

「……言っただろ」



――何かあったら俺に電話。分かった?



「桃子から電話が来るかもしれないんだ。スマホは常に気にしてるんだよ」

「そ、そうなんだ……」


だからって、バスケ中も?

体育館にスマホを持ち込んで、チラチラ確認してくれてるの?

そんなのってさ、まるで――


「やっぱり蓮人くんの優しさって、すごい大胆だよ」

「は? 何言ってんの。それより傘ひろえって。濡れてるぞ」


私の代わりに、サッと傘を持ち上げる蓮人くん。

自分は入らずに、私の上にだけ傘をかざす。


「皐月はどうした? さっき一緒に帰ってただろ」

「皐月くんは〝忘れ物したから先に帰って〟って」

「……ふーん」


パタパタと、傘にぶつかる雨音。

その音が、なぜだか私の心臓と共鳴してくる。


パタパタ、ドキドキ――