ビターなフェロモン (短)


「大事に想い過ぎて怖くなったんだ、もしもこの関係が崩れたらって。……臆病にならず、早く言ってしまえば良かったのに」

「皐月くん……?」

「桃子――また明日からも、俺と一緒に登下校してくれる?」

「あ、当たり前だよ! 私が学校に行けるのは、皐月くんがいてくれるからこそだもん。

いつも一緒にいてくれて、本当にありがとう」

「――うん」


ふっと笑った皐月くんが、さっきよりも大人っぽく見えた。

雨、のせいかな?


すると「そう言えば学校に忘れ物したから戻るよ」と、皐月くんはするりと私の手を離す。


「一緒に戻るよ?」

「ううん。桃子は先に行って。この雨だしね」

「わ……分かった」


互いに「また明日」と手を振り、別々の道を行く。

皐月くんの言いたいことって……なんだったんだろう。

いや、それよりも――


「なんで私、さっき皐月くんを追いかけなかったんだろう」


一緒に行くよって、言えば良かったのに。

皐月くんの事が好きなら……例え雨の中でも、一緒にいられる方が幸せなはずなのに。