ビターなフェロモン (短)


「んーん、なんでもない。さっきのは流して」

「え、でも……」

「本当に。いいから、ね?」


ぽんっ


皐月くんは、私の頭を撫でる。

温かな手なのに、皐月くんの笑顔はやっぱり寂しそうで……思わず名前を呼んでしまう。


「皐月くんっ」


だけど――


「違うでしょ」

「え……?」

「桃子が呼びたいのは、きっと俺じゃないよ」

「それって……」


今度は、私が皐月くんに手を伸ばす。

だけど皐月くんに上手にかわされてしまって……。


そう言えば……さっき蓮人くんにも手をかわされたなぁ――なんて思っていると。


きゅっ


私を避けたはずの皐月くんが、私の手を掴み……恋人つなぎをした。


「さ、皐月くん……?」

「……あーあ、本当にズルいよ。あっという間に横からかっさらってさ」

「え、」


ワタワタ慌てる私に、皐月くんはニコリと笑った。

ぎゅっ、ぎゅっと。繋いだ手に力を込めながら。