ビターなフェロモン (短)


「あ、今日もバスケやってるね蓮人」

「……本当だ」


ふと、さっきの蓮人くんを思い出す。


――約束したから


あの時の蓮人くんが寂しそうに見えたのは、気のせいかな。

私が近くにいたから、フェロモンの影響を受けたとか?

そうだとしたら、蓮人くんは今ごろ――


心配が頭をよぎった時、体育館の中から「ナイシュー蓮人」って掛け声。

声を辿ると、目頭にガーゼを貼った蓮人くんがバスケ部とハイタッチしていた。

その顔には、いつもの笑顔が浮かんでいる。


「……そうか。あの時、悲しそうに見えたのは」


カレンダーで負傷した後だったから、傷がズキズキして痛かったのかも。

けっこう血が出ていたし、ケロッとした顔をしてたけど痩せ我慢だったのかな。


「寂しい顔に見えたのは、ケガのせいだったんだ……」


ん?あれ。
なんで私、ちょっと残念がってるんだろう。

蓮人くんは怪我していたから、いつもと違うように見えただけ。


――お幸せに


だから、あの言葉も、蓮人くんくんの本心。

そっかそっか納得――のはずなのに。


「……」


空に浮かぶ雨雲と同じく、私の心もなんだか晴れない。

なんで私、こんなにモヤモヤしているんだろう。