「お前は皐月のものになるんだし、ちゃんとしとかないとな。
俺と桃子は金輪際、互いを触らないこと。いいな?」
「え……」
「フェロモンのせいとはいえ、あんな桃子の姿を見たら、さすがの皐月も泣くぞ。
俺だけの秘密にしといてやるから。桃子は安心して皐月と幸せになれよ、分かったな?」
蓮人くんと視線が合わないからか、私に言われてる気がしなくて……。
「分かった」と返事が出来ないまま、無意識のうちに眉間にシワが寄る。
「じゃあ約束したから。お幸せに」
「あ……」
触らないこと――と約束した指切は、交わることなくエアーで終わった。
といっても、私が薬指を出す前に、蓮人くんは行ってしまったのだけど。
「っていうか〝お幸せに〟って……。皐月くんの言う〝話〟が、〝告白〟って決まったわけじゃないのに」
周りが盛り上がるばかりで、肝心の私たちはいつも通り。
私が皐月くんの元へ駆け寄っても、
「行こっか」
「うん」
ほら、いつも通り。
いつもの景色を見ながら、いつもと同じように二人で並んで帰る。
すると校舎を出てしばらくした後、体育館でバッシュが鳴る音が聞こえた。



