ビターなフェロモン (短)


でも、でもさ。

まだ告白って決まったわけじゃない。

そりゃ、あんな言い方をされたら誰だって勘違いしちゃうけどさ。

皐月くんが私にって……たぶん、ない。


そう。
ない――と、思っているのに。


あの時の、皐月くんの瞳を思い出す。

いつもよりも輝いていて、熱くて……。

二人が絡んだ視線は、なぜだか離しがたかった。


「おい、もう帰れよ。皐月が待ってるぞ」

「え!」


急に蓮人くんに話しかけられ、ビクッと肩が跳ねる。


い、いたんだ。気づかなかった。

しかも、もう放課後!?


蓮人くんが指さす方を見ると、皐月くんがこちらを見て手を振っていた。

控えめに手を振り返すと、そばに立っていた蓮人くんが「よかったな」と皐月くんを見たまま呟く。


「長年の願いが叶うじゃん」

「え、私の気持ち……」

「とっくに知ってる。だからさぁ、

約束しようぜ」

「約束?」


蓮人くんは薬指をだす。

私は、ゆっくりと席を立った。