ビターなフェロモン (短)


「よかった。実はね、その時に……

伝えたいことがあるんだ」

「え、」


伝えたいこと――?


何かあったのかな?と思う一方で、その言い方はまるで……と妙な胸の高まりを覚える。

そう感じたのは私だけではないらしく、クラスの皆も「きゃー!」とか「今のってさ!」と顔を赤らめた。

ただ一人、蓮人くんを除いて。


「なぁ蓮人。お前の分身、スゲー度胸あるな」

「……分身じゃない。むしろ正反対の生き物だ」

「正反対?」

「……」


友達の質問に答えないまま、まだ色めき立つ教室から姿を消す蓮人くん。

その姿に気づくわけもなく、私はただ、真っ直ぐ見つめてくれる皐月くんから目をそらせないでいたのだった。



――結局。

その日は、皐月くんの話題でもちきりだった。



「公開告白予約したらしいよ〜」
「皐月くん意外に男らしいね!」
「あー、宇佐美さんが羨ましい」


なんて。

教室だけでなく、廊下を歩いても、他のクラスの前を通っても、色んな人が噂をしている。