となりの初恋

女子は私をじろりとなめ回すように見たあと、何も言わずに去って行った。


私はため息をついてポケットに手を入れる。
さっき入れたくじがくしゃくしゃになって入っていたけど、そのままにして携帯を出した。


右耳にイヤホンをつけ、左耳にもイヤホンを入れようとしたその時。


一つの声が、耳に届いた。


「なんとも思ってないんだ、俺のこと」


いつの間にか起き上がっていた櫻井海斗が頬杖をつきながら、私の方を見て言った。


私は危うく手からイヤホンを落としそうになって、慌てて拾った。


「動揺しすぎ。さては男慣れしてない？」


また机に突っ伏して、顔だけこちらに向けながら言ってくる。
右耳から聞こえてくる曲の音量が大きくて、イヤホンを取って机に置いた。


「……起きてたんですか」
「え？あぁ、まぁね。面白そうだと思って」


ふわぁと欠伸をしながら目を閉じる。
みんなは櫻井海斗のことをイケメンとか言うけれど、私にはよく分からない。