「おこちゃまの海斗くんには分からなくて良いです」

「お前なぁ」

「頑張るよ」


子供をあやすような口調とは打って変わって、ときたま見る真剣な声色だった。
真剣ではいるのだけれど、その中に青さとか、甘さとか、色々なものが混じっている。


「頑張るよって……何を?」

「色々。でもまぁ、そうだね」


透は自分の中で何かに踏ん切りがついたのか、清々しい表情(かお)をしている。
それとは反対に俺は透が何を思っているのか掴めないままだ。


「恋とか、かな」


最後の方は叫ぶように言いながら、透は屋上を出て行く。
あいにく人はいなかったから良かったものの、女子でもいたら大騒ぎだろう。


せっかく透が恋をする気になったんだ。
人生で、初めての恋を。


なら応援してやろう。
透の友達として。
それに、高橋さんだって石川さんの恋を応援したいはずだし。


俺は残りのイチゴミルクを急いで飲みながら、透を追いかけることにした。