最近、透の様子がおかしい。


俺と二人で図書館に行って、石川さんを追いかけて飛び出していったあの日から。


詳しいことはよく分からない。
俺は高橋さんにおすすめの本を教えて貰っていたら、戸が開く音と透が石川さんを呼ぶ声が聞こえた。


そのまま透もリュックを背負って出て行ってしまって、そこからは知らない。


どうなったのか分からないし、お互いがお互いのことをどう思っているのかも分からない。


でも高橋さん曰く、石川さんは透のことが好きらしい。


「絶対そうなの、絶対。花菜ちゃん、ずっとその透って人のことが好きなんだよ」


確証はないけど、友達としてなんか分かるらしい。
高橋さんがそう言うなら、俺がするべきことは一つだ。


「おい、透」


屋上の柵にもたれかかる透に声をかけた。
手に持っていたブラックコーヒーの缶を透に向かって投げる。
少し驚きながらも透は軽々とキャッチした。