わたしの声で我に返ったように、透くんは握っていた手を離した。


「……ごめん、変なこと言ったね。俺帰るわ」


リュックを背負い直して、透くんはわたしに背を向けた。
声をかけようとして、やめた。


透くんにかける言葉が、見つからない。


何を言っても、透くんを傷つけてしまう気がする。
わたしを信頼して言ってくれたかもしれないのに、その直後に裏切られるなんて嫌だろう。


一人でとぼとぼと歩いて行く背中を、わたしはただ見つめることしか出来なかった。