「補佐官たちには基本的に隣の部屋で仕事をしてもらっているんだ。ほら、あっちに机がたくさん並んでいるだろう? オティリエの机も用意してあるから、あとで確認して」

「ありがとうございます」


 ヴァーリックが指さしたのは扉のない続き間だった。どうやら終始ヴァーリックと一緒にいるわけではないらしく、オティリエは少しだけ安心してしまう。


(こんなにずっとドキドキしていたら身体がもたないわ)


 そんなオティリエの表情を見つめながら、ヴァーリックが彼女の手を握る。驚き慌てふためくオティリエを前に、ヴァーリックはそっと目を細めた。


「そろそろ食事にしようか。色々と話したいことがあるんだ」

「あ……はい。よろしくお願いいたします」


 エスコートのためだとわかっているのに……わかって以降もオティリエのドキドキは止まらない。ヴァーリックをチラリと見上げつつ(やっぱりこれじゃ身がもたない)と思うのだった。