オティリエにはカランの心の声が聞こえているから気にならないが、他の人には彼女がなにをしているか、なにを考えているかわからないことも多いのだろう。仕事が遅い、できないというレッテルを貼られても仕方がない。


(だけど)

「とってもお似合いです! 本当に、愛らしいですわ!」


 仕立て屋がそう言って瞳を輝かせる。お世辞ではなく本心だ。


「……ありがとう」


 カランが選んでくれた一着は着心地がよくオティリエにとても似合っている。時間はかかったがとてもいい仕事だ。


(カランに任せておいたら大丈夫)


 彼女はきっと、オティリエのためにいろんなことを頑張ってくれるだろう。

 もう一度鏡に映った自分を見つめながら、オティリエはそっと瞳を細める。


(ヴァーリック様、似合ってるって言ってくれるかな)


 そのとき、なぜかそんなことを考えてしまい、オティリエの頬が赤くなった。胸がドキドキと鳴り響く。もうすぐ迎えが来るというのに――落ち着こうと思えば思うほど、オティリエの緊張感はましていくのだった。