翌日からオティリエの日常はガラリと変わった。

 朝早くから侍女たちがやってきて彼女の身なりを整えていく。ボサボサに伸びた髪を切りそろえられ、軽く化粧を施し、これまでよりもマシなドレスを着てマナー講師の到着を待つ。

 ただ、オティリエにとってそれは苦業に等しかった。


【どうして私がオティリエ様の身なりを整えなければいけないの? イアマ様は美人だからいいけど、オティリエ様は見ていてイライラするのよね】
【愛らしさのかけらもない黒い髪ね……イアマ様の金髪とは大違い。これ、どうやったら美しくなるわけ? 正解がちっともわからないわ】
【化粧映えのしない青白い肌ねぇ。頬骨が浮いてて骸骨みたい】


 普段オティリエは人との接触を最小限におさえて悪口を聞かないようにしている。けれど、父親の命令がある以上、侍女たちは絶対にオティリエの部屋に来てしまう。彼女たちの心の声を聞き続けることはまるで地獄のようだった。


 不幸中の幸いだったのは、夜会に向けて少しでもオティリエの肉付きを良くするために、毎日食事が運ばれてくるようになったことだ。これまでのように冷めきっておらず、メニューも父親やイアマと同じものだ。温かくて美味しくて、オティリエは誰にもバレないように少しだけ泣いてしまう。