「こちらは女官のみなさまから特にご愛用いただいているドレスです。華やかで、上品なデザインと評判でして、うちの店で一番の売れ筋商品です」

「そ、そうなんですね……」


 店員に紹介されたのは光沢のある柔らかな生地でできたドレスだった。体のラインに沿ったマーメイドタイプで、品よく大人っぽい一品である。


(店員さんもおすすめしているし、ひとまずはこれでいいかな……)


 自分のためにあまり時間をとらせるのも申し訳ない。オティリエはドレスに近づいてみる。


【うーーん……このドレス、すごく綺麗で城内でも同じタイプのものをよく見るけど、オティリエ様にはあまり似合わない気がするなぁ】


 と、カランの心の声が聞こえてきた。『似合わない』の言葉に若干ショックを受けつつ、オティリエはカランをチラリと見る。


【オティリエ様は小柄でスレンダーだから、もっと違うタイプのドレスのほうが似合う。というか、絶対可愛いと思うのよね。多分、このドレスが一番高くて儲けが多いんだろうけど、すすめるドレスを間違ってると思うわ】

(わぁ……)


 御名答。オティリエには店員の心の声もバッチリ聞こえている。商売人だから儲けを追求するのは当然だと思い、あまり気にしないようにしていたが、似合わないなら話は別だ。そもそも、ドレスを選ぶのだって、ヴァーリックの隣に立つに相応しい格好をするためなのだし。


【でもなぁ……このドレスを着ている人を見ると仕事ができる女って感じがするし、オティリエ様はもしかしたら気にいるかも……】

「あの、カランはどう思う?」


 自分からは口を挟みづらいだろう――オティリエはカランに助言を求めてみる。