「それでは、午前中いっぱい時間を差し上げますので、ドレスを何着か選んでください。ヴァーリック様からランチミーティングをと言われていますので、それまでに着替えを済ませて。時間になったら迎えに来ます。午後からは挨拶回りをしますので、そのつもりで」

「わかりました。お忙しいなかご対応いただき、ありがとうございました」


 エアニーはカランの紹介を終えたあと、ヴァーリックの元へと戻っていった。曰く『オティリエを急に迎え入れたことで、仕事がおしている』らしい。そういう内情を包み隠さず話してくれるところがオティリエにとってはありがたい。へんに心の声で聞かされるより、ずっと気が楽だ。

 と、エアニーと入れ替わるようにして仕立て屋が部屋にやってくる。彼らはすぐに着られる既製品を多数持ってきてくれたらしく、オティリエはホッと胸をなでおろした。

 すぐにお給料がでるわけじゃないはずだから、ドレス代の請求先は当然父親だろう。オートクチュールでそろえろ、なんてことにならなくて助かったと思う。もちろん、ヴァーリックの指示なのだし、侯爵家としての体面的なものもあるから文句を言われはしないだろうが。


(それにしても、いろんなドレスがあるのね)


 オティリエは部屋に運ばれてきたドレスを眺めつつ、ほぅと小さくため息をつく。
 一口にドレスといっても、昨日の夜会で着ていったものとは素材もデザインもまったく違っていた。