「ですからまずは身近なところから――カランと練習してはいかがでしょう?」


 考え込んでいるオティリエに向かってエアニーが提案する。


「そう、ですね。あの……ちなみにカランの給金はどのようにすれば?」


 自分の世話をしてもらうというのに、費用を王宮に負担してもらうのは気が引ける。オティリエがおずおずと質問した。


「もちろん、アインホルン侯爵に請求します」

【まあ、王宮で直接雇用したままでもいいんですけどね……そうしたほうがオティリエさんの精神衛生上よいでしょう?】


 エアニーは返事に加え、心のなかでそう説明する。そのへんの内情はカランには聞かせないほうがよいと判断したのだろう。オティリエは小さくうなずきつつ、カランのほうに向き直った。


「それじゃあ……よろしくお願いいたします」

「……! はい、あの……よろしくお願いいたします!」


 オティリエが言えば、カランが嬉しそうに瞳を輝かせる。


【受け入れてもらえてよかった! 少しでもヴァーリック様のお役に立てるよう頑張らないと!】


 自分とよく似た彼女の心の声を聞きながら、オティリエはそっと目を細めた。