エアニーとの挨拶を終えたあと、オティリエは彼女の私室へと案内された。


「城内は用途によって塔が分かれています。執務を行う行政塔と王族の皆さまが暮らす塔、それから使用人たちが暮らす塔です。他にも夜会や会合用の広間や図書館、温室に礼拝堂などが備えられていますが、残念ながら本日中にすべてをまわることはできません。時間がいくらあっても足りませんからね。そして、ここから先が使用人用の塔です。あとで地図を渡しますよ」

「なるほど……ありがとうございます」


 エアニーの後ろを歩きながら、オティリエは必死にメモをとる。


(気を抜いたら迷子になってしまいそう)


 物覚えは悪くないほうだが、これだけ広く、似たような部屋が並んでいると、慣れるのに時間がかかるかもしれない。


「オティリエさんの部屋はこちらです。日当たりがいいでしょう? ヴァーリック様があなたのためにと選んでくださったんですよ」

「ヴァーリック様が……」


 部屋を見回しつつオティリエは胸が温かくなる。