王太子のヴァーリックは見目麗しく才気煥発と評判の十七歳の青年だ。けれど、なかなか夜会等の場に顔を出すことがなく、イアマも他の令嬢たちも彼との出会いの機会をうかがっていたのである。
「オティリエを連れて行かないなら、妃殿下の手前、私やイアマも夜会には参加できない。ほんのいっとき我慢するだけで千載一遇の機会を得られるんだ。活用しない手はないだろう?」
イアマはヴァーリックの妃の座を狙っている。王室が彼の結婚相手を選びはじめていると噂になっているが、現状はあくまで噂の域を出ない。つまり、まだどの令嬢も条件は同じ――横並びの状態だ。ならばヴァーリック本人に働きかけるのが手っ取り早い。
しかし、イアマがどんなに美しく魅了の能力を持とうとも、まったく接触の機会がない相手を魅了することはできない。つまり、是が非でもこの夜会には参加しなければならないのだ。
「まあ、事情が事情だし、今回だけは仕方ないわね。お父様のおっしゃるとおり、オティリエにはわたくしの引き立て役になってもらうことにするわ」
イアマはそう言ってふふっと笑う。
(行きたくないなぁ)
そう思いつつ、オティリエは密かにため息をついた。
「オティリエを連れて行かないなら、妃殿下の手前、私やイアマも夜会には参加できない。ほんのいっとき我慢するだけで千載一遇の機会を得られるんだ。活用しない手はないだろう?」
イアマはヴァーリックの妃の座を狙っている。王室が彼の結婚相手を選びはじめていると噂になっているが、現状はあくまで噂の域を出ない。つまり、まだどの令嬢も条件は同じ――横並びの状態だ。ならばヴァーリック本人に働きかけるのが手っ取り早い。
しかし、イアマがどんなに美しく魅了の能力を持とうとも、まったく接触の機会がない相手を魅了することはできない。つまり、是が非でもこの夜会には参加しなければならないのだ。
「まあ、事情が事情だし、今回だけは仕方ないわね。お父様のおっしゃるとおり、オティリエにはわたくしの引き立て役になってもらうことにするわ」
イアマはそう言ってふふっと笑う。
(行きたくないなぁ)
そう思いつつ、オティリエは密かにため息をついた。