(え? それって……どういう意味?)


 彼が抱いているのが好感なのか、嫌悪感なのか、はたまたまったく別の感情なのか、ちっとも判断できない。『ヴァーリックらしい』という言葉の意味合いを彼と出会ったばかりのオティリエが理解できないのは当然なのだが、どうしても気になってしまう。


「オティリエ、エアニーは君の同僚――僕の補佐官の一人だよ」

「そうなんですね。よろしくお願いいたします」


 オティリエが頭を下げると、エアニーはほんのりと眉を上げた。


「あ……あの?」


 それはどういう感情、どういう表情なのだろう? もしかして、オティリエと一緒に働くのが嫌なのだろうか?
 困惑しているオティリエをチラリと見つつ、ヴァーリックがエアニーに微笑みかけた。


「エアニー、仕立て屋の手配は?」

「終わっております。もうまもなくこちらに到着する予定です」

「オティリエの雇用契約書は?」

「そちらもすでに。アインホルン侯爵に送付する文書一式も整えました」

「午後からの段取りは?」

「すでに関係各所に通達を出しております。資料のほうもこちらに」

「うん、完璧」


 ヴァーリックはそう言ってニコリと笑う。息のあったかけあいにオティリエは呆気にとられてしまった。