階段を降りると、寝間着にガウンを羽織ったオティリエの父親が二人の前に現れた。


「こ、これは殿下! こんな格好で申し訳ございません。なにぶん先ほど目が覚めたばかりでして」


 もみ手をしたあと、父親が勢いよく頭を下げる。そのあまりの勢いにオティリエは思わず目を見開いた。


【使用人たちが血相を変えて起こしに来るからなにごとかと思えば……まさか本当に殿下がお見えになっているとは思わなかった。しかし、情報が錯綜していて状況がまったくわからない。どうしてオティリエは殿下に抱き上げられているんだ?】


 父親はヴァーリックとオティリエとを交互に見ながら困惑を隠せずにいる。ヴァーリックはほんのりと微笑んだ。


「構わないよ。昨夜は疲れただろう? こちらこそ、こんな時間に悪かったね」

「いえいえ、とんでもございません!」


 ヘコヘコと頭を下げつつ、父親は心のなかでため息をつく。


【昨夜はイアマの機嫌が過去最高に悪かったからな……。馬車のなかで延々と恨み言を聞かされたせいで疲れたんだ。それもこれもすべてオティリエのせいだが】


 そこまで考えて父親はオティリエをチラリと見る。