ヴァーリックの手助けを受けつつ、オティリエはその場から立ち上がった。背中を打ち付けた痛みのせいでフラフラしてしまう。


「大丈夫……じゃないね。痛かっただろう?」


 ヴァーリックはオティリエを自分に寄りかからせたあと、彼女の頬をそっと撫でる。オティリエの涙を拭ったあと、ヴァーリックはイアマのことをじっと見つめた。


「それで? イアマ嬢、君はオティリエ嬢になにをしていたんだ?」

「なにって……これは家族の問題ですから。殿下には関係のないことですわ」


 オティリエのことを『家族だと思ったことはない』などと言っておきながら、イアマはまるでそんな発言はなかったかのように笑ってみせる。しかし、内心では彼女はとても焦っていた。


【なんで? どうして殿下がこんなところにいるのよ! 侍女は! お父様は一体なにを考えているの!?】


 オティリエは困惑を隠せないまま、イアマとヴァーリックとを交互に見つめた。