「バッカじゃないの! 少し優しくされたからっていい気になって。身の程を知りなさい! あんたなんかが連絡をとったところで、殿下にとっては迷惑なだけよ! あんたにとって殿下は特別でも、殿下にとっては夜会でほんの少し会話をしただけの小娘なの! きっとすでに忘れているわよ!」

「お嬢様、あの……」


 そのとき、イアマの侍女がオティリエの部屋の扉を開ける。どこか困惑したような表情だ。


「なに!? 今、取り込み中だってわからない? ああ、それともあなたも加わりたいの? いいわ。歓迎するわよ」

「いえ、そうではなく……」

「ごきげんよう、イアマ嬢」


 そう言って侍女の背後から現れたのはヴァーリックだった。彼はイアマに鋭い視線を向けた後、オティリエに向かって微笑みかける。


「迎えに来たよ、オティリエ嬢」


 ヴァーリックから差し出された手のひらを見つめながら、オティリエは涙を流した。