オティリエの胸が強く痛む。このままなにも受け取らずに逃げ出してしまいたい……しかし、そんなことをしては空腹に喘ぐことになるだろう。すでに限界が近いというのに。

 意を決し、オティリエはもう一度使用人たちに向き直った。


「私の食事を用意して。それから水もお願いね」


 使用人たちは不服そうに顔を見合わせると「かしこまりました」と頭を下げた。


 ようやく部屋に食事を持ち帰ったのち、オティリエは小さくため息をつく。使用人に渡されたのは野菜くずの入ったスープに固いパン、それから肉の切れ端だけだ。


(まったく、私の分の牛頬肉はどこにいったのかしら?)


 おそらくは使用人たちが勝手に分け合っているのだろう。しかし、父親もイアマも、文句を言う人間は誰もいない。完全に黙認されている――むしろ歓迎されている節もあるのだ。

 冷めきったスープを飲みながらオティリエの目頭が熱くなる。悔しくてたまらないが次の食事はまた数日後だ。大事に――笑顔で食べなければバチがあたる。


(ああ、美味しい)


 ……そう思ったはずなのに【悲しい】と自分の声が脳裏に響いてきて、オティリエはそっと眉根を下げた。