【なるほどね……精神撹乱系の能力か】


 とそのとき、ヴァーリックの心の声が聞こえてきた。オティリエはハッと顔を上げ、ヴァーリックのことをまじまじと見上げる。


【『魅了』――いや、ここまで強いなら、もはや『洗脳』といったほうが正しいかな。どうだろう? ……オティリエ嬢、もしも僕の見立てが正しかったら、左手を握ってくれないかい?】


 ふと見れば、ヴァーリックはさりげなく背中の後ろに手を回している。オティリエは急いで彼の手を握った。


「はじめまして、イアマ嬢。お会いできて光栄だよ」


 ヴァーリックはオティリエの返事を待ったあと、イアマに向かって挨拶を返す。すると、イアマはピクリと眉間にシワを寄せた。


【どうして? なんでわたくしの能力が効いていないの? 本来なら、わたくしに跪いて愛を乞うはずなのに】

(……え? お姉様はすでに能力を発動しているの?)


 ヴァーリックがあまりにも普通にしているため、オティリエはイアマが彼を魅了しているとは思っていなかった。とはいえ、それならなぜ、ヴァーリックにイアマの能力がわかったのかも不思議なのだが……。