【書籍&コミカライズ】魅了持ちの姉に奪われる人生はもう終わりにします〜毒家族に虐げられた心読み令嬢が幸せになるまで~

「だろう? カップはココアの代金に含まれているから、持ち帰れるのも魅力なんだ。オティリエはきっと喜んでくれると思って」


 ヴァーリックがそう言ってオティリエに顔を寄せる。すると、店員がクスクスと笑い声を上げた。


「お客さん、毎年来てくれていたのに昨年は姿が見えなかったから、寂しく思っていたんだけど、そうか。こんなに愛らしい恋人ができていたんだね」


 オティリエとヴァーリックは顔を見合わせると、どちらともなく真っ赤に染まっていく。


(私たち、ちゃんと恋人同士に見えるのね)


 実際のところ、二人は恋人ではなく婚約者なのだが、それだけ仲が良く見えるということだろう。ヴァーリックは店員にお礼を言うと、とても嬉しそうに笑った。


 温かいココアをたっぷり堪能した後、二人は再び街を歩きはじめた。広場の中央では劇団員たちが歌やダンスを披露しており、お祭り気分やロマンチックなムードを存分に楽しめる。ふと見ると、家族連れは家に帰ったのか、周りは恋人たちで溢れかえっていた。


(みんな幸せそう)


 自分たちも同じように見えるのだろうか――オティリエはほんのりと目を細める。
 とそのとき、くしゅん、とヴァーリックがくしゃみをした。