【書籍&コミカライズ】魅了持ちの姉に奪われる人生はもう終わりにします〜毒家族に虐げられた心読み令嬢が幸せになるまで~

(ああ、まさかヴァーリック様のこんな笑顔が見れるようになるなんて)


 これまでヴァーリックは仕事一辺倒だった。夜会にもほとんど出席しなかったし、社交も仕事を円滑にするために行っているだけのこと。視察に行っても当然羽目を外すことはなく、いつも王太子として国のため、民のために生き、仕事をしてきた。楽しむ、というのは二の次三の次四の次ぐらいの概念で、母親である王妃が密かに心配していたほどである。

 けれど、ここ数日の間にヴァーリックは変わった。

 これまでどおり仕事を最優先にはしているが、どこか肩の力が抜けているし、毎日とても楽しそうだ。それから、オティリエを喜ばせるためだけに、エアニーに相談を持ちかけてくれる。


(ありがとう、オティリエさん。オティリエさんのおかげで、ぼくにもヴァーリック様の心の声が聞こえるようになったみたいです)


 これから先も、ヴァーリックはこんなふうに自分へ本音を聞かせてくれるだろうか? 頼りにしてもらえるだろうか? ……そうだったらいいな、とエアニーは心から思う。

 ヴァーリックには見えぬようこっそり唇を綻ばせつつ、エアニーはそっと目を細めるのだった。