「ありがとう、助かるよ。それで、もしよかったら、仕事終わりに少し時間をもらえると嬉しいんだけど」

「仕事終わりに……? はい、承知しました」


 てっきり今相談をされると思っていたのだが、ヴァーリックはそう言って仕事に戻ってしまう。


(珍しいな)


 というより、こんなことははじめてだ。一体どんな相談をされるのだろうと、エアニーはソワソワしてしまう。


 仕事が終わったあと、エアニーはヴァーリックの私室へと向かった。そのまま執務室で相談をすることもできたはずだというのに、どうやら絶対に人に聞かれたくない内容らしい。


「わざわざ部屋まで来てもらって悪かったね」

「いえ、とんでもないことでございます」


 ヴァーリックの望みならば、なんでも喜んで叶えます!――とは口にしなかったものの、エアニーは真顔のまま瞳を輝かせる。

 侍女にお茶を淹れてもらってから人払いをし、二人はソファに向かい合って座った。しばらく無言でお茶を飲んでいたが、ややして


「相談っていうのはね」


 と、ヴァーリックが神妙な面持ちで口を開く。