【書籍&コミカライズ】魅了持ちの姉に奪われる人生はもう終わりにします〜毒家族に虐げられた心読み令嬢が幸せになるまで~

(ヴァーリック様は今、どんなことを考えていらっしゃるんだろう?)


 彼の心の声はちっとも聞こえてこない。もちろん、ヴァーリックは普段から無効化を用いて、オティリエに極力心の声を聞かせないようにしているのだけど、なんだか無性に気持ちが知りたいと思う。


 そうこうしているうちに、使用人たちが暮らす塔までたどり着く。オティリエはヴァーリックに向き直ると「ありがとうございました」と頭を下げた。


「うん」


 ヴァーリックは目を細めて笑ってから、名残惜しそうにオティリエの手を離す。


「おやすみ、オティリエ」


 ポンポン、と幼子をあやすように頭を撫でられ、オティリエはそっと目をつぶった。


(今夜はなんだかいい夢が見られそう)


 心と体がぽかぽかと温かい。オティリエはヴァーリックを見上げると、満面の笑みを浮かべる。