【書籍&コミカライズ】魅了持ちの姉に奪われる人生はもう終わりにします〜毒家族に虐げられた心読み令嬢が幸せになるまで~

『幼い頃の僕は、自分の能力が好きじゃなかったんだ』


 ふと、オティリエははじめて会った夜のヴァーリックの言葉を思い出す。


『だって、僕の能力って、自分自身でなにかができるわけじゃないんだよ? 母上なんて未来を視る能力があって、立派に国を守っているというのに、僕は他人の能力がなければなにもできない。腹立たしくて、悔しくて、拗ねていた時期がかなり長かったんだ』


 おそらく、この頃のヴァーリックはまだ、他人の能力をただ羨んでいた時期なのだろう。自分がどれだけ素晴らしい能力を持っているか気づかないまま……。


(そうだわ!)



「あ、あの! ヴァーリック様にお願いがあるのですが」

「どんなこと?」


 オティリエは気を取り直して、ヴァーリックの方を向く。ヴァーリックは心の声を微塵も感じさせない笑顔で、オティリエに応じた。


「ヴァーリック様の能力を私に渡していただけませんか? そうすればればきっと、現代に戻れると思うんです!」

「僕の?」


 オティリエの話を聞くと、ヴァーリックは驚きに目を見開く。だが、ややして悲しそうな表情を浮かべた。