「未来から来た?」

「ええ、その……信じがたいとは思うのですが、私は未来でヴァーリック様の補佐官を務めているんです」


 オティリエは幼いヴァーリックと並んで座り、ここに至るまでの事情を説明する。
 まだ十歳にも満たないというのに、ヴァーリックはどこまでもヴァーリックだった。彼は護衛騎士に『大丈夫だから』と言って聞かせ、離れたところに控えさせている。頭の回転が早く理知的で、年下と話しているという感覚がまったくしない。
 すべて話し終えると、ヴァーリックは「なるほど」と口にした。


「僕は君のことを信じるよ」

「ヴァーリック様……」


 思わず縋りつきたくなるような優しい笑顔。オティリエは目頭が熱くなる。どんなに絶望的な状況でも、ヴァーリックがいれば大丈夫だと安心できた。


【それにしても、他人を過去に飛ばせる能力を持つ人間がいるのか……すごい能力だ。僕とは全然違って】


 と、ヴァーリックの心の声が聞こえてくる。オティリエは少しだけ目を丸くし、ヴァーリックの顔を覗き込んだ。