【書籍&コミカライズ】魅了持ちの姉に奪われる人生はもう終わりにします〜毒家族に虐げられた心読み令嬢が幸せになるまで~

「ヴァーリック様」


 案内された部屋には、オティリエの父親――アインホルン侯爵が控えていた。侯爵の能力は他人の記憶を読み取ること――彼とオティリエの能力とを使って、事件当日に城にいた人間を徹底的に調査したのである。


「それで、オティリエは?」

「それが……どうやらオティリエは過去に連れ去られたようでして」


 侯爵が苦々しげにそうつぶやく。ヴァーリックは目を丸くすると、思わず口元を手で覆った。


「先ほどからずっと、連れ戻す方法を聞き出しているのですが『そんな方法はない』の一点張りで……。娘の能力で心の声を聞いておりますので、どうやら本当らしいのです。しかも、過去に送られた人間は時空の歪みに耐えきれず、オティリエはすぐに消滅してしまうのだと」


 真っ青な顔に涙を流し侯爵がうなだれる。


「いったいどうしてこんなことに……。ようやく! ようやくあの子は幸せになれたというのに」


 聞いているこちらの胸が張り裂けそうなほど苦悶の声。
 けれどその時、ヴァーリックはふっと口元を和らげた。


「大丈夫だよ。オティリエは必ず帰って来る」

「え?」


 その場にいた全員が驚き、勢いよく顔を上げる。
 ヴァーリックの表情には先ほどまでの不安も憂いも何もない。確信に満ちていた。