「それにしても、初恋の女性を十年も追いかけ続けるなんて、すごいよな」

「本当本当。ここまで一途でいられるのって才能だよ」

「俺の場合、初恋は五歳で、相手は十五歳も年上の侍女だったし……」


 と、他の補佐官たちが自分たちの初恋について語り始める。


(初恋、か)


 懐かしそうな表情の男性陣――だが、オティリエにとってそれはついこの間の出来事だ。思わずヴァーリックの方を見ると、彼もちょうどこちらを向いたところで、オティリエはドキッとしてしまった。


「オティリエさんの初恋は、当然ヴァーリック様なんでしょう?」

「え? えっと……はい」


 補佐官たちがニヤニヤと笑う。恥ずかしさのあまりオティリエの頬が真っ赤に染まった。


【嬉しいな……もしもふたりきりなら抱きしめていたのに】


 まるで耳元で囁くかのように、ヴァーリックが心の声を伝えてくる。次いで優しく手を包みこまれ、オティリエは一層胸を高鳴らせた。