あれから三カ月。

 オティリエはヴァーリックの補佐官兼婚約者として今日も幸せに暮らしている。
 妃教育をこなしながら補佐官の仕事を続けることはとても大変だ。前例だって当然ない。けれどそれはオティリエ自身の希望によるものだった。


「だって私はヴァーリック様の補佐官ですもの。……ヴァーリック様の補佐官でいたいんですもの」


 婚約をしても、結婚をしても。どれだけ大変でも、ずっとずっとヴァーリックの補佐官として働き続けたい。一番近くで、ヴァーリックを支え続けたいと……オティリエはそう願っている。


「うん……そうだね」


 オティリエに寄り添いながらヴァーリックが笑う。


「オティリエは僕の優秀な補佐官で、愛しい婚約者で、世界で一番大切なかけがえのない人だよ。君のかわりはどこにもいない。だから……ずっとずっと、僕の側にいてくれる?」


 コツンと音を立てて二人の額が重なった。ヴァーリックの心臓の音が、オティリエをどれほど想っているかが伝わってきて、オティリエは思わず泣きそうになる。


「もちろん! ずっとお側にいさせてください!」


 ほほえみあい、二人は口づけを交わす。

 こうして、魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、大切な人と、このうえない幸せを手に入れたのだった。