「強引に連れ出してごめんね」

「え……?」


 イアマたちから離れてすぐ、ヴァーリックがそう言った。彼は給仕に頼んで食事を取り分けてもらい、オティリエを優しくエスコートする。


「いえ、そんな……」

「あのままあの場で話を続けたら、イアマ嬢に邪魔をされてしまうと思ったんだ。彼女には聞かせたくない話もあったしね」

「そうだったんですか……」


 そうこたえはしたものの、オティリエはいまいち腑に落ちない。会話を邪魔されて困るという感覚がわからないからだ。

 そもそも、こうしてヴァーリックと会話をしていること自体があまりにもおそれ多い。他の貴族たちの注目も着々と集まってきているし、同年代の令嬢たちの嫉妬と羨望の眼差しを強く感じる。それに加えて、オティリエに対する悪口だってはっきりと聞こえはじめていた。


(お姉様の心の声に比べれば随分優しいものだけど)


 それにしたっていい気はしない。オティリエはビクビクと背筋を震わせた。