「お父様……あの」

「すまなかった、オティリエ!」

「……え?」


 目の前で父親がうずくまる。彼の身体はひどく震えていて、オティリエは思わず目を丸くしてしまった。


「お父様?」


 慌てて駆け寄ったオティリエの耳に、父親のすすり泣きが聞こえてくる。


「すまなかった……! 本当に、すまなかった! 私はなんてことを……なんてことをっ…………!」


 これが形ばかりの謝罪でないことは見ればわかる。父親の悔恨の念が痛いほど伝わってくるし、オティリエまでつられて泣きそうになってしまうほど。


「お父様……あの、頭を上げてください」


 父親はうずくまったまま激しく首を横に振る。嗚咽が執務室に響き渡り、オティリエはギュッと胸を押さえた。


「謝って済む問題でないことはわかっているんだ。謝罪をすることで自分が楽になりたいだけだろうと罵られたって仕方がない。けれど私は、オティリエにあまりにも申し訳なくて……! オティリエがどれほど辛い思いをしてきたか、気づいてやれなかった。守ってやれなかった。それどころか、私自身がオティリエを苦しめてしまうなんて……! すまなかった、オティリエ! 本当に、すまなかった!」


 ガンガンと地面に頭を打ち付けながら、父親がオティリエに謝罪をする。