エアニーと一緒にお茶を楽しんだあと、オティリエは彼が用意してくれた馬車で城に戻った。あたりはすっかり真っ暗で、空のてっぺんで月や星々が美しく光り輝いている。


(ヴァーリック様、今頃なにをしていらっしゃるかしら?)


 定時で退勤したため彼がどうしているかはわからない。まだ執務室にいるだろうか? そんなことを思いつつ、オティリエは庭園の中をゆっくりと進む。こんなにも月が綺麗な夜なのだ――少しぐらい寄り道をしたってバチは当たらないだろう。ため息を一つ、オティリエはそっと空を見上げる。


(明日、ヴァーリック様に話しをしよう)


 どうしてオティリエがヴァーリックの想いにこたえることができないのか。エアニーも話していたが、これ以上彼を待たせるべきではない。

 本当はものすごく怖くてたまらないし、勇気だって足りていない。ヴァーリックが他の女性と結婚することを想像すると胸がたまらなく苦しくなるし、逃げ出したいような気持ちにも駆られてしまう。それでも、彼のことを想えばこそ、オティリエは決心しなければならない。


(私はヴァーリック様に幸せになってほしいから)


 オティリエのことを救ってくれたヴァーリックのために。誰よりも大切な彼のために。……どうか幸せになってほしい。そのためには自分に自信が持てないオティリエではダメなのだ。