(私がお断りしたら、ヴァーリック様はどんな反応をなさるかしら?)


 彼はとても優しい人だから。穏やかで温かい人だから。オティリエがどんな選択をしても、それを尊重してくれる気はしている。

 けれど、それで本当によいのだろうか?

 「わかったよ」と困ったような笑顔を浮かべて返事をするヴァーリックの顔を想像しつつ、オティリエはぐっと拳を握る。大好きなヴァーリックにそんな顔をさせていいのだろうか? 本当に後悔しないだろうか? そもそも、どうしてオティリエはこんなに迷っているのだろうか……?


「オティリエさん、仕事が終わったら少し話しをしませんか?」

「え? あ……エアニーさん」


 と、エアニーから声をかけられる。彼はオティリエを見つめつつ「たまにはお茶でもいかがでしょう?」と言葉を続けた。


(エアニーさんが私を誘うなんて……)


 彼がプライベートで誰かに声を書けるのははじめてだ。どんな話がしたいのか……心の声を聞いていなくとも察しはつく。


「私でよろしければ、是非」

「では、そのように」


 エアニーは返事を返すと、またすぐに仕事に戻った。