それからあっという間に数日が経った。オティリエはこれまでどおり、ヴァーリックの補佐官として穏やかな日常を送っている。
 ……あまりにも変化がないから、時々あのプロポーズは夢だったんじゃないかと思うほどだ。


(なんて、本当は嘘)


 オティリエがそんなふうに思えるのはヴァーリックが最大限に配慮をしてくれているからだ。
 彼自身から返事を急かすことはないし、他の補佐官たちにも同様の対応を求めたのだろう。結婚について言及されたのは心の声も含めて求婚の翌日だけだった。本当は気になっているだろうに……若干の申し訳無さを感じてしまう。

 とはいえ、オティリエは未だにこたえを出せていない。返事を急かされないことはとてもありがたかった。


「一体どうする気ですか?」


 と、背後から声が聞こえてきて、オティリエはビクリと肩を震わせる。


(あ……私のことじゃなかったのね)


 見ればエアニーが他の補佐官となにかを話し合っているところで、オティリエはホッと胸をなでおろした。


 とはいえ、あまり引き伸ばすべきでないことはたしかだ。こたえは決まっておらずとも、ヴァーリックを長く待たせるのは忍びない。……となると、断るべきなのだろうか? オティリエの胸がズキンと痛む。