「だけど、僕は王太子だから――感情だけで己の伴侶を選んではいけない。幼い頃からそう言われて育ってきたし、自分自身もそう思っていた。誰もが納得する素晴らしい女性を妃として迎え入れなければならないって。……だから今日、きちんと向き合ったよ」


 ヴァーリックはそう言ってオティリエを見る。


「他に妃にふさわしい女性がいないかちゃんと見て、考えた。だけど、向き合えば向き合うほど、考えれば考えるほど、僕にはオティリエしかいない。誰よりも妃にふさわしいのはオティリエだって……そう思うんだ」

「そ、そんな……私はそんな……」

「可愛くて優しくて、誠実で公正で。おっとりして見えるのに実はものすごくガッツがあって。はじめはただただ『守ってあげたい』って思っていたはずなのに、いつの間にか僕のほうがたくさん守られていた。王都での街歩きのときも、神殿の件も」


 彼はオティリエの前までやってくると、ひざまずいて手を握る。オティリエの心臓がドキドキと高鳴った。