「あの日……」


 ヴァーリックの言葉を繰り返しながら、オティリエはそっと目を伏せた。
 どの日、どの話をさすのか――説明を受けなくてもすぐにわかる。神殿について片がついた夜のことだ。


『オティリエ、これからもずっと僕の側にいてほしい』


 あのとき、ヴァーリックはそう言っていた。『もう一度……今度はオティリエが勘違いしようのない状況を作って、ちゃんと伝えるから』とも。


「オティリエ、僕はオティリエが好きだよ」


 ヴァーリックが言う。胸がひときわ大きく跳ね、思わず涙がこぼれそうになった。


「ヴァーリック様、それは……」

「補佐官としてじゃないよ。一人の女性として君のことを特別に想っている。僕はオティリエのことが好きだ。この世界の誰よりも。……ずっと、ずっと好きだったよ」


 彼の頬は真っ赤に染まり、瞳が薄っすらと潤んでいる。言葉から、表情から、ヴァーリックの想いが痛いほど伝わってきて、オティリエは胸をギュッと押さえた。